
Pianoベンチマーク最新動向:2025年、検索トラフィックに何が起きたのか?
AIによる検索トラフィックの侵食、サブスクリプション収益への波及、そしてパブリッシャーが取れる収益リスクへの対策——検索結果の上部にAIサマリーが表示されるようになり、パブリッシャーへの検索トラフィックが激減するなか、この一年でPianoがクライアントと最も多く議論してきたテーマです。
これらを検証するべく、私たちは数百のウェブサイトにわたる過去数年分のデータを掘り下げました。本レポートが対象とするのは、2025年1月から12月までの期間です。
データが明かす、検索トラフィックの真実
検索トラフィックは36%減少。 収益も16%減少した一方で、全体の訪問者数の減少は9%にとどまりました。
検索トラフィックの大幅な落ち込みを和らげた要因が2点ありました。1点目は他の流入元が成長し、検索の減少を部分的に補ったということ。さらに重要なのが2点目で、離脱した訪問者は、残った訪問者ほど価値が高くなかったという点です。検索経由の訪問者1人あたりの新規サブスクリプション収益は31%増加しました。
最も大きく伸びたのはダイレクト流入で、流入元を持たないサイト訪問者の割合は30%増加しています。これは、ホームページをブックマークしている人や、メッセージアプリやメールで共有されたリンクをクリックした人、URLを直接入力した人などです。2025年はダイレクト流入の訪問者数が、検索流入の訪問者数を初めて上回りました。
検索やダイレクトに次いで多い流入元は、ニュースまとめサイトです。Google Discover、Google News、Yahoo、Apple Newsのほか、さまざまなサイトやアプリが含まれます。この流入元は22%増加しましたが、その成長のほとんどはGoogle Discoverによるものでした。しかし、ダイレクトやニュースまとめサイトからの流入は増えても、検索からの流入減少を補うまでに至りませんでした。
検索の価値はエンゲージメントで決まる
検索トラフィックの減少とサブスクリプション収益の落ち込みの差には、重要なメッセージが込められています。検索経由の訪問者をエンゲージメント別に分析すると、その意味が明確になります。Pianoの最新ベンチマークレポート「Back to Basics:サブスクリプション・マーケティングの原点回帰」では、行動データに基づいてパブリッシャーのサイト訪問者を3つに分類しています:
一見ユーザー:月1ページビュー、月1日のみ訪問
中エンゲージメントユーザー:月2〜4ページビュー、月2〜3日訪問
高エンゲージメントユーザー:月5ページビュー以上、月4日以上訪問
これらのセグメントを検索トラフィックに当てはめて分析した結果、エンゲージメントが低いユーザーほど、減少幅が大きいという傾向が見られました。
検索経由の一見ユーザー(検索訪問者数の約半数を占める層)が最も大きく減少しました。一見ユーザーの占める割合は、2023年9月の18%から、2026年1月には12%へと低下し31%減、中エンゲージメントユーザーも12%から9%へ低下し、25%減となりました。一方、高エンゲージメントユーザーの検索トラフィックはほぼ横ばいで、3.3%から3%へのわずかな低下にとどまりました。
収益が守られた理由
一見ユーザーは検索訪問者の約半数を占め、総訪問者数の12%にあたります。しかし、新規サブスクリプション収益への寄与はわずか0.3%にすぎず、ARPU(1ユーザーあたりの平均収益)は20セント (USD)未満です。つまり、検索トラフィックから消えた訪問者の多くは、もともと購読に至る可能性が低かったと言えます。
一方で中エンゲージメントユーザーは、検索経由のサブスクリプション収益において最大のシェアを占めており、高エンゲージメントユーザーの約3倍の規模です。2025年を通じてこの層からの収益は減少しましたが、高エンゲージメントユーザーからの収益損失も、グループ規模がはるかに小さいにもかかわらず、ほぼ同規模に達しました。これは、高エンゲージメントユーザーのコンバージョン率が著しく高いためです。
検索トラフィックの減少は、収益よりも新規訪問者の獲得にはるかに大きな打撃を与えたゆえ、検索経由で残った訪問者、あるいは再訪を促せる訪問者こそが、最も価値の高い存在だと言えます。
この状況は、検索経由で流入している訪問者のエンゲージメントを最大化する必要性を示しています。回遊を促すコンテンツレコメンドや、ニュースレター登録による再訪促進など、継続的な接点を構築する施策への注力が不可欠です。
AIリファラル:規模は小さいが、注視すべき動き
全体として、検索からのクリック数は確実に減少しています。Pew Research Centerの調査では、検索結果にAI Overviewsが表示される場合、クリック数は約47%減少します。さらに、 AI Overview 内で紹介されたリンクを実際にクリックする訪問者は全体の1%です。
*Pew Research Center:アメリカ合衆国のワシントンD.C.を拠点とする、非営利・無党派の世論調査機関
多くのPianoクライアントにとって重要なニュー・やスポーツ分野では、AI検索の影響は依然として限定的です。SEMRushによると、2025年11月時点でAI検索結果が表示される割合は、ニュース5.4%、スポーツ3.8%に抑えられています。これは、全体平均8.7%や、健康分野16%、コンピューター&エレクトロニク17.9%、科学26%と比べ低い水準です。
*SEMRush: SEO・広告・競合分析などを一括で行えるデジタルマーケティングツール
Pianoのデータによると、12月時点のベンチマーク対象のすべてのサイトにおいて、AIツール経由のトラフィックが確認されましたが、規模は小さく、最も多かった10月時点で全体の0.1%にすぎません。AIからのトラフィックは変動幅が大きい点も特徴で、Pianoのベンチマーク対象サイト全体では、月次で数十万人規模の増減が見られます。
AI経由のトラフィック量は小規模な一方で、サブスクリプション収益は拡大傾向にあります。12月時点では、AI経由収益が全体の0.23%を占めており、これは全訪問者の3倍以上高い水準です。さらに、ARPUはAIツールの15.50ドル(USD)、検索の3.36ドル、ダイレクトの5.45ドルと大きく凌駕しています。
ただし、これらの結果は特定の企業に限定されます。現時点でAI経由のサブスクリプション収益で顕著な成果を上げているのは、主にB2B向けコンテンツを展開する一部企業です。その背景には、強固なSEO・GEOの基盤と、独自性・付加価値の高い記事の継続提供が主な要因です。
サブスクリプションビジネスの結論
検索トラフィックは減少傾向にあるものの、検索は依然としてサブスクリプション獲得に有効なチャネルです。ただし、過去1年間の変化が示すように、検索だけに依存した戦略では限界があります。Pianoが繰り返し強調してきたように、ブランド認知とロイヤリティを高め、再訪を促すエンゲージメント戦略こそが鍵となります。 SEOやGEO・AIO(生成エンジン・AI向け最適化)は重要ですが、あくまでも戦略の一部に過ぎません。
次回ベンチマークアップデートでは、検索トラフィックが減少する中でも収益を伸ばすパブリッシャーが活用している具体的な施策、価格設定、解約防止、コンバージョン最適化について詳しく分析します。





